不器用上司のアメとムチ

とりあえず箱を開けて、夏でも溶けないらしい焼きチョコを一粒食べてみる。

……うん、毒は入ってないみたい。


「今まで、ごめんなさいね……」

「え!?」


毒は入っていなかったけど、小出さんのその発言に驚いて思わずむせそうになる。


「私ね……副社長の大ファン、というか、むしろ彼に恋をしてたの。でも、こんなオバチャン相手にされるわけないから、見てるだけで満足だったんだけどね。

だから、いつも隣に居て彼の視線を一身に受け止めてたあなたが異動してきて……つい意地悪なことを」


小出さんは、しおらしくそう言ってあたしを見た。

京介さんのファンなら……そりゃ確かに、あたしのことは気に入らないだろう。

でもなんで、今さら謝る気に……


怪訝に思いながら彼女を見ていると、急に口元を手で隠してふふふと笑い出した。

こ、今度は何……!?

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