不器用上司のアメとムチ
「私、先に食堂行って席とっといてあげるから!早くその仕事片づけて来なさいね~」
「はぁ……どうも」
お昼になっても相変わらずテンションの高い小出さんは、そう言って管理課を出て行ってしまう。
冷たくされなくなったのはありがたいけど、仲良くするのもまた面倒臭そうだな……
だけど、席を取っといてくれるなら早くいかなくちゃ。
あたしはきりのいいところで作業を中断し、椅子から立ち上がる。
「――梅チャン、せっかくあの人と一緒にメシ食うならこないだのこと聞いてみたら?」
同じように自分の仕事を終えたらしい佐々木が、あたしの隣に並んで歩きながら言った。
「こないだのこと……?」
あたしが首を傾げると、佐々木はまだ休憩に行きそうもない久我さんをちらりと見てから小声でささやく。
「あの人が、バツイチかもしんないって話」
「あ……そっか。小出さんなら知ってるかもしれないんだっけ」
久我さんの心をかたくなにしている“写真の彼女”との過去……
聞くのが少し怖いけど、気になるから早くはっきりさせたい。
あたしは外でご飯を食べるという佐々木と別れて、食堂へ足を進めた。