不器用上司のアメとムチ
がやがやと社員たちで賑わう食堂に着くと、あたしは小出さんの姿を探した。
見つからないなーと思いながらお盆を手に取り、料理の注文口に続く列に並ぶ。
すると、急に誰かにぐいっと肩を引かれてあたしは列から外れてしまった。
「あんたの分、もう確保してあるから!」
「小出さん……びっくりさせないでください」
「あはは、悪いねぇ。席、こっちだから!」
彼女に導かれるままに食堂の端の席に座ると、あたしの目の前にはかなりガツンと胃に来そうなカツカレーが。
まさか……これ、あたしの?
「若い子はそういうのが好きでしょう!あんた午前中元気なかったし、たくさん食べて気持ち切り替えなきゃ駄目よ!」
向かいの席でそう言った小出さんは、美味しそうな山菜そばをすすっている。
あたしも、そっちがいいなぁ……とは、いえない。
「いただきます……」
仕方なく食べ始めたカツカレーだったけど、さすがは人気の社員食堂。
それほど厚くない衣に包まれた肉は柔らかいし、カレーはじっくり煮込んである本格的な味で、あたしはあっという間に平らげてしまった。