メゾン・ド・フォーチュン
幸運荘
「虹だ」
水平線にかかる大きな七色の橋
さっきまで雨が上がり
大きな虹があたしたちの目の前に現れた。
「すごい。綺麗!
七瀬くん、ありがとう。
あたし、海なんか来たくないって思ってたけど。
来てよかった。
七瀬くんのおかげで
この空みたいにすっきりした気分。」
「それはそれは。」
あたしたちは顔を見合わせてふふっと笑った。
それは多分私から、
彼の頬にキスをした。
彼は驚いてたけど、あたしを引き寄せ唇を重ねてきた。
ただそれだけ、
そのあとどうやって別れて、
どうやって帰ったのかほとんど覚えていない。
連絡先さえ聞かなかった私たち。
でも、その一瞬私たちの心は重なって、
確かに恋をしてた。
海の香り
雨の香り
淡いひと夏の恋の記憶
私と七瀬くんの小さな思い出…