ピエロなあなた

近づきたい

携帯を見つめたまま、ずっと動けないでいた。もうこのまま駅前の人混みに溶け込んでもいい。人混みがあたしの存在を消してくれればいい。TAKUさんには気づかれたくない。

あたしは止まらない涙を拭えずに、俯いて携帯をボーっと眺めていた。



急にあたしの頬に触れる指に、気がついてびっくりした。顔を上げたら、笑顔のあなたがいたんだ。


「何かあったか?」


気づいてくれたのが嬉しかった。存在を消してしまいたかったのに、あたしに気づいてくれたのが嬉しかった。他の人じゃダメなんだよ。あたしに気づいて欲しいのはTAKUさんだけなんだ。

TAKUさんはもう仮面を外していて、あたしの涙を指で拭ってくれたの。泣き顔を見られたのが、すっごく恥ずかしかった。







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