【短編】ダンサー
「ごめんっ、痛かった?」

慌てて謝る顔は普通の高校生だった。

高校生相手になに動揺してるんだろう。

「・・・痛くないよ。で、どこ?」

早くどっか行って欲しくて急かす様に聞いた。

「遠いから、泊まろうよ」

明るい笑顔を真っ直ぐに向けた。

高校生だろうと寝るのに抵抗は無い、私だって終電逃してるんだから。

でもその笑顔はダメ、さっきから落ち着かないのはそのせいだ。

昼間の健全な笑顔は、私の気分を滅入らす。

私が寝るのは、どこか疲れていて、心に空洞のある人。

荒い息づかいの中で、相手の空洞をじかに触って確認して、やっと安心して気持ち良くなれる。

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