【短編】ダンサー
「え?」

「足、・・・長いね」

「ああ、よく言われる」

自慢げに言った。

「あ、そ」

「昔ね、言われたんだ。長い足はすごい武器になる、って」

モテ自慢なんてやっぱ高校生だな。

「なった?」

「なったじゃん、さっきあいつらに」

「あれ、回し蹴り、っていうの?たしかに武器だ」

フッと笑ってしまった私を見て、微笑みは笑顔に変わった。

「ううん、回してないし、蹴っても無い。ただ上げただけ。ケンカした事無いって言ったでしょ?」

上げただけにしては、相手との距離をちゃんと計算してて、自分の足の長さをよく分かっている。

それはダンサーとして当然と言えば当然だけど、まだまだ育ち盛りの高校生にとっては難しい事だ。

良い先生についてレッスンしたらいいのに、そう言いかけて、止めた。

私には関係無い、この子もダンスも。

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