【短編】ダンサー
時折アドバイス的な言葉を掛けながら、1時間以上続いたその作業をそばでじっと見つめた。

「分かった気がする」

そう言ってくるっと回ったターンは完璧に近かった。

「出来た。今、俺出来てたよねーー?」

これ以上無いくらいの満面の笑みで私に言った。

出来なかった事が出来た時の喜びは、私も何度も味わっているからよく分かる。

一段登って、その先に見た事の無い新しい世界が開けた喜び。

無限の可能性が自分の中に生まれる快感。

嬉しそうに何度も何度もターンをくり返す拓海君。

自分の事みたいに私も嬉しくなった。

「長い足は扱いに困る事もあるけど、すっごい武器にもなるんだよ」

そうだ、私がそう言ったんだ。

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