【短編】ダンサー
着信拒否の設定をしながらホテル出て、公園を横切って駅へと向かう。

夜の公園では、音楽を流しながらダンスの練習をしているグループがいた。

「違うよー、右だって、こっちこっち」

「えーー、どっちー?」

「もー、お前はーー」

甘える女の子と嬉しそうな男の子の声。

楽しそうに笑い合っている。

何となく目の端に入れながら歩いた。

ちゃんと練習しろよ、ヘッタクソだなー、まるで基礎が出来ていない。

でも私にもあんな頃があったか・・・、もうずっと昔の事。

あ、あの男の子ターンが上手い。

輪の中の一人が、音楽なんて全く無視してくるっと回った。

男の子の体は上から一本の糸で釣られたように、中心のブレなくきれいな弧を描いた。

女の子の歓声に、調子に乗って何度かくるくると回った。

うん、出来てる、首も目線も完璧、こんなとこで遊んでないでちゃんとレッスンしたらいいのに。

間もなく歩く私の視界から消えた。

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