【短編】ダンサー
手から熱が伝わってじわっと温かい。

「触らないで」

「ごめん」

手が離れると、ひざは急速に冷えていった。

「もういいでしょ?あんたの思い出には付き合いきれないから」

「分かったよ。でも1つだけお願い聞いて」

「・・・」

「俺のターン見て。ずっと練習してきたから、あの時より上手くなってるか見てよ」

「それなら公園で見た。出来てた、これでいい?」

「ダメだよ、ちゃんと見て。あの時みたいに近くで、俺だけを見て」

あの時みたいな純粋でひたむきな目でじっと私を見ながら、ベット脇の狭いスペースに立った。

全身からダンサー特有の凛としたオーラを出して、そこだけスポットライトが当たったように輪郭がくっきりとしている。

「見たくない」

下を向いた私を無視して、拓海はターンを始めた。

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