【短編】ダンサー
1回、2回・・・見なくても空気を切る音と呼吸で分かる。

3回、4回、5回・・・、スピードは落ちず、寸分の狂い無く正確なターン。

6回、7回、8回、9回、嫌なのに私の頭は勝手に回数を数えていく。

それが20回まで来た時、一瞬拓海の呼吸が乱れた。

「止めてよっ」

「止めない、何回だって回れる、麻衣さんが見てくれるまで」

数回深呼吸して息を整えると、すぐにターンを再開した。

下を向いたままの私の目以外の全部で拓海を感じていた。

もう止めて、プロのダンサーだってそんなに連続して出来ないよ。

今微妙にリズムが狂った、私の方を見たんでしょ?

止めて、そう言おうとした瞬間、拓海の汗が飛び、それはひざに当たり痛めた筋をたどる様に流れた。

汗は、少し温かかった。

私は顔を上げた。

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