【短編】ダンサー
電車で街中へと向かう。

夜11時を過ぎた頃からのこの通りが好きだ。

沢山の女の子がいるが、昼間の子達とは完全に入れ替わっている。

昼間は、ラブラブなカップルや、友達と笑っている、健全で安全な子達。

そんな子達に怯えるように身を隠していた子が、この時間くらいから姿を現し始める。

一人だったり、二人だったり、大勢だったりはするが、みんな一様に同じ目をしている。

輝きを失い、全てを諦めた目。

声を掛けてくる男や、すれ違う女に絶えず向けられる目は、何を探すでも、誰に期待するでもなく、ただ時間が過ぎるのをじっと耐えている。

そんな私と同じ匂いがする人達に紛れているのが心地良い。

私の事なんて誰も知らないし、興味も無い、世界から自分が消えた様な感覚。

いつもの様にあてもなく歩いていると、右足のひざに鈍い痛みを感じ始めた。

あんまりつまらなくてさっきビール飲んじゃったんだっけ。

お酒を飲むと古傷が痛む。

< 3 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop