【短編】ダンサー
「・・・痛いの?」

さっきとは違う、本気で心配している目をしていた。

「え・・・?」

ドキッとした。

その目が私の内側を見ようとしている様に見えたから。

「足、引きずってたし」

足?

「あ、・・ああ、ちょっと古傷がね」

「この辺?」

しゃがんで、ひざの痛めた筋を正確に指先でなぞった。

「やめ・・てっ・・・」

反射的に足を引いた。

そこだけは触られたくない。

どんな男に体のどこを触られてもいいが、そこだけは絶対に誰にも触られたくない。

ひざの痛みは私の心に直結している。

ひざが痛むたびに心がズキズキと痛い。

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