おいでよ、嘘つきさん。

警察官は大きな声で言いました。
『俺の友達を、この町から出してやれ』

門番も大きな声で答えました。
『駄目だ』『駄目だ』

警察官は更に大きな声で言いました。
『友達を困らせる奴は捕まえる』

門番も更に大きな声で答えました。
『駄目だ』『駄目だ』


馬鹿げた会話に、メリッサは嫌気がさしました。
「家に帰ろう…」

メリッサは、ゆっくり歩き出しました。

警察官は更に更に大きな声で宣言しました。
『今、新たに法律が決まった！メリッサだけは町の出入りを自由とする！』

門番も更に更に大きな声で答えました。
『御意』『御意』

警察官は自信満々に言いました。
『メリッサを町から出してやれ』

門番も自信満々に答えました。
『承諾』『承諾』


メリッサは立ち止まりました。呆気なく町から出られる事になったのです。
コマデリは呼びました。
『メリッサ〜！町から出られるよ！』

メリッサは、どうしたら良いのか分からなくなりました。狂った警察官に助けられた事も理由の１つですが、暴言を吐いたくせに喜ぶのも変だと思ったからです。
コマデリは、メリッサの手を引いて門番の前まで連れていきました。

しばらく沈黙が続きましたが、メリッサは口を開きました。
「ターコイズへ行きますので、通して下さい」

門番は答えます。
『承諾』『承諾』

メリッサは驚きます。しばらくすると、嬉しさが込み上げてきて、胸が高鳴りました。ついに町から出られるのです。

緊張しながら、門番の横を通り過ぎます。一歩、一歩ゆっくりと歩きました。
完全に、門の外へメリッサは出る事が出来ました。

初めての世界が広がっています。その光景をみて感動します。
「やっと、自由になれた」
鎖に縛られていた心が、解放されたのを感じました。

しかし、すぐに我に返りました。コマデリが出て来てないからです。
メリッサが、慌てて振り向くとコマデリは嬉しそうに手を振って言います。
『メリッサ〜！また、お菓子作りにきてね』

メリッサは戸惑いながら言いました。
「コマデリも来なさいよ！」

『僕は出られないもん』

「警察官に頼みなさいよ」
『え〜、でもな…』

「何よ！早く行きましょう！」

『僕は町を出るの、やめたんだもん』

メリッサは驚きました。あんなに話し合い、計画まで実行したのに『やめた』の一言で終わったからです。

メリッサは、怒りました。
「何よ！意気地無し！すぐに諦めるんだから」

『すぐ？違う、違う。昨日だよ』

「はぁー！？ふざけないでよ。約束したでしょ！」

『うん。でも、僕は友達の警察官さんもいるから町に残るよ！』

「どういう意味よ！意味分からない！もう良いわ、さようなら！」

『メリッサは出入り自由だし、お菓子作りに帰ってきてね〜』

「知らない！」

『あんまり遠くへ行かないでね。いつでも帰ってきて！』


メリッサは「二度と帰らない」と決心し、歩きはじめました。
しかし、コマデリの色々な発言が引っ掛かります。
「何？この違和感は…」

メリッサは強い違和感を感じながらも「馬鹿なコマデリに、違和感だなんて有り得ない」と呟き走り出しました。