おいでよ、嘘つきさん。
何日待っても、ネリネは帰ってきません。
ミモザは、腹が立ちました。
「何よ!美容師の勉強がそんなに楽しいの!?私だって画家になるんだから!」

ミモザは、ネリネを忘れようと必死に絵を描きました。
いろいろな場所に、ストットを連れてまわり絵を描くのです。
ストットは感心して「ミモザは凄いな。努力家だよ」と言いました。
ミモザは「画家は努力より才能が大切なんだけどね」と苦笑いします。
ただ、ミモザは腹立ちを絵にぶつけていたのです。

毎日が平凡に過ぎるなか、ミモザはネリネを思い出していました。
ネリネが居なくなって三ヶ月が過ぎます。
忘れようと思っても、忘れられなくて辛い日々です。
たくさん励ましてくれて、支えてくれたネリネ。

一生の友達と約束したのに、何も言わず消えてしまったネリネを思うと悲しくて仕方なくなります。

ミモザは、想いがあふれ涙を流しました。
「ネリネに会いたい」
ミモザは、叶わないであろう想いを呟きました。


しかし、願いは叶ったのです。
部屋の扉が開く音に、ミモザが振り返るとネリネが立っていました。

あまりに突然だったため、ミモザは声が出ません。
しかし、ネリネは変わらず優しい声で言いました。
「どうしたの?悲しい事があったの?」

ミモザは、更に泣き出してしまいました。
ネリネが居ないと、全て駄目になる自分が情けなかったからです。

泣きじゃくるミモザに、ネリネは駆け寄りました。
「大丈夫だよ。何があったの?」

ネリネの問い掛けに答えられません。ネリネは、机の上を見ました。そこには、ミモザが描いた絵の山ができていました。
ネリネは驚きます。
「全部、ミモザが描いたの!?すごい、見て良い?」

ミモザは黙ったまま頷きました。ネリネは立ち上がり机へ向かいます。
山積みの絵を一枚一枚、ゆっくり見ているネリネを見ていると、なぜだかミモザも落ち着いてきました。
「ネリネが、帰ってきてくれた」
ミモザは思いました。


しばらく沈黙が続き、ネリネは全ての絵を見終わりました。ミモザはネリネの言葉を待ちます。
ネリネは振り向きミモザに言いました。
「ミモザらしくない絵だよ」

ミモザも分かっていました。ネリネが近くにいた時とは、違う感情で描いた絵だからです。
ミモザは涙を拭い、立ち上がりました。
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