おいでよ、嘘つきさん。
しかし、サフィニアも「無理だ」とばかり言っていられない状況になります。


どこからか、トリトマが町を出たがっている話しがもれたのです。


トリトマが町を歩いていると、町民は疑いの目でみてきます。


「おい、トリトマ。嫌な噂を耳にしたが…。ただの噂だよな?」


「トリトマ、変な噂を聞いたけど嘘よね?そんな馬鹿な事しないわよね?」


トリトマは、平静を装い答えるのです。


「どんな噂か知らないけど、信憑性のないもんだろ。まったく、そんな噂に惑わされないでくれよ。」



町の人々は、トリトマを疑いますが証拠もないため、誰かの嫌がらせだと思っていました。


町を出るだなんて、もし、町の人々にバレたら大変な騒ぎになります。


下手をすれば、命に関わるほどの問題です。


トリトマも、その事は分かっているため緊張と不安を感じていました。


しかし、町を歩いていてトリトマは思うのです。


「この町はヤバい」


つい最近まで、お腹の大きかった女性が、ぺったんこのお腹で1人で歩いている。

まるっきり同じ犬を二匹、まるっきり同じ人間二人が連れている。


双子が同じ日に葬式をあげている。


トリトマは、この光景を嫌な気持ちで見るのです。


「全てに理由がある」


トリトマは、その理由を考えただけで吐き気がします。

だからこそ、町を出たくて仕方ないのです。
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