おいでよ、嘘つきさん。
サフィニアは、家にこもっていました。
トリトマの嫌な噂があるため、余計に外に出たくなくなったのです。
トリトマは、こりずにサフィニアを説得しています。
「なぁ、兄貴。心は決まったか?」
「トリトマ、勘弁してくれ。その話しは、しない約束だろ?」
「そんな約束なんかしてない。町を出よう。二人なら出られる。いや、出ないといけない!」
「でかい声を出すな。それでなくても、お前の嫌な噂が広まってるんだぞ?」
「逆にチャンスだと思えば良い。誰かが俺らにチャンスをくれたんだ。」
「馬鹿な事を言うな。今は、まだ噂程度だから良いが…。はぁ…、トリトマやっぱり危険だ。実行するにも方法がない。命に関わるぞ。」
サフィニアの心が動いているように感じたトリトマは、少し声を小さくして話します。
「どちらにしろ、この町にいる限り命なんて有って無いようなもんだろ。俺らも、いずれ…。」
サフィニアは、厳しい顔でトリトマの声をさえぎります。
「やめろ。それ以上は言うな。分かっている…。」
しばしの沈黙。
トリトマはサフィニアの顔色を伺います。
青白く、力の抜けた瞳。
せっかくの美男が台なしです。
それほどに、サフィニアは悩み疲れていました。
この町を、誰よりも恐れているのはサフィニアなのですから。