おいでよ、嘘つきさん。

両親はよく言い合いをします。

言い合いの理由はプラタナスについてがほとんど。
どうしても、二人のプラタナスへの意見は噛み合わずぶつかり合うのです。
お互いの主張は「プラタナスを愛しているから」と同じなのに。

プラタナスは二人の仲を取り持つ役目ですから、必然的に口が達者になっていきました。


友人が深く傷付いていると優しく慰め、喧嘩をしていると静かに仲裁するのですから大したものです。

そんなプラタナスなのに、「からっぽ頭のプラタナス」の噂だけはずっと残るので、友人達は「溢れる才能プラタナス」「中身がいっぱいプラタナス」等、低俗な噂を流します。

でも、やっぱり「からっぽ頭のプラタナス」だけが残るのです。

友人達は気味悪がりましたが、プラタナス本人は全く気にせず毎日を自由に過ごしていました。

規則正しい生活が嫌だった訳ではないのですが、外にいる事が昔から好きだったので幸せを強く感じていたのです。

プラタナスは友人に熱く語りました。

「外の世界は無限の可能性を秘めているわ!人間もそうだと思わない?内にこもっているだけでは何も起こらないもの」

友人はちょっと捻くれて答えます。

「まぁね。外の世界は確かに魅力的よ。でも、人間はどうかしら?内にこもったままにしておいた方が良い場合が多いわよ」

プラタナスは笑って言いました。

「ふふ、おかしな事を言うのね。どんなモノであっても外に出して良いのよ!いえ、寧ろそういうモノこそ強く出すべきだわ!」

友人は、この言葉を聞いて「だから、からっぽ頭のプラタナスなんて言われても平気なのね」と妙に納得しました。
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