おいでよ、嘘つきさん。

劇団員

ある日、町に劇団一行が訪れました。帰路の途中に寄ったそうです。

その一行は、ずっと東にある大きな都市の有名な劇団の者達です。

皆は一目見ようと集まり、ちょっとしたお祭り騒ぎになりました。

もちろん、プラタナスと友人も近くで見ていました。

劇団員達は、疲れていましたが笑顔でこたえ手をふります。

町の人々が次から次へと質問をします。

適当に答えるのですが、いつまでたっても質問は終わりません。

段々と面倒になってきた、劇団員の一人が｢からっぽ頭なので答えられません｣と、彼のお得意の台詞でおどけてみせました。

すると、町人達が一斉に笑い出し、中には手を叩いてアンコールを要請する者までいたのです。

いくらお得意の台詞とはいえ予想外の反応に劇団員は驚きましたが、反応が良いのは気持ちが良かったのでアンコールに答えました。

案の定、大爆笑がおこり涙を流して笑う者までいます。

少し、気味悪く思えた劇団員は先に進もうとしました。

すると、町人の誰かが、
｢プラタナス！お前の仲間がいるぞ！一緒に行かなくていいのか！？｣
と叫び、その後はまた大爆笑です。

劇団員の一人は足をとめ、振り向きました。


｢おっ！仲間がこっちを見てるぞ！ほら、感動の再会だ！！｣

と町人が笑いながらプラタナスを前へ突き出しました。

プラタナスはよろけましたが、すぐに姿勢を戻し美しくお礼をしました。


｢からっぽ頭のプラタナスと噂されてる女です。｣


町人達は、狂喜を感じるほど笑い罵声をあげました。
劇団員は驚きました。
目の前には、輝く美しい髪を腰まで伸ばし、ふっくらとした頬はピンク色、小さな唇は美しく歯を食いしばり、必死に罵声に耐えている少女がそこにいたのですから。
下品な笑い声を掻き消すように劇団員は唄います。

｢あぁ！麗しい姫君よ！泥沼に足をとられ自由に駆け回れないその姿。美しい心の持ち主には悲劇にうつり、汚れた心の持ち主には喜劇にうつるでしょう！｣

そう言って、プラタナスの前にひざまづきました。

何が起こったのか分からない町人達は静まり返り、プラタナスの友人だけが拍手をおくります。