おいでよ、嘘つきさん。

医者はゆっくりと歩きだし、トリトマの隣を通り過ぎます。


町の人々は、じっと睨み目を離しません。


トリトマは医者の隣に並び、一緒に歩きます。



「よろしく頼むよ。」



トリトマは言い、ゆっくり家の扉をあけました。


町に緊張が走ります。


医者も、この妙な緊張感に体が震えます。



「家の扉は開いておけよ!」



町の男が叫び、トリトマを睨みました。


トリトマは鋭い瞳で、男を睨みながら「わかってる」と、小さく呟きます。


家の扉を大きく開き、中が見えるようにしました。


外の明かりが家の中を、照らします。


薄暗い部屋、大きな黒い塊が床に倒れているのがうっすらと見えました。


医者は、緊張しすぎて足が動きません。


トリトマは、そんな医者を促します。



「怖がることはないよ。ただ、兄貴が倒れてるだけだから。」



トリトマの優しい声色に、医者は少し安心すると小さく頷き、家の中に一歩を踏み込みました。
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