おいでよ、嘘つきさん。
明るい緑が美しい草原に、一台の車が停まっています。
トリトマは、草原に座り空を眺めていました。
太陽が眩しく、雲は大きく、暑い日差しが肌をジリジリと焼いてきます。
夏の日差しに、トリトマは浸っているのです。
「この場所なら、静かで良いな。」
トリトマは立ち上がり、車へと向かいます。
扉をあけ、トリトマは声をかけました。
「兄貴、着いたぜ。」
そう言うと、トリトマはサフィニアの肩に手を置きます。
そして、笑うのです。
「名演技、ご苦労さん!」
トリトマは、サフィニアの肩をタンッと叩き笑いました。
「痛っ!…、名演技は、トリトマだろ。はぁ、恐かった…。」
サフィニアの声。
サフィニアは死んでなんかいませんでした。
そして、苦笑いしながら話します。
「医者は絶対に気づいてたぜ。俺の首を触った時、確実に…。」
サフィニアは、わざとらしく恐ろしそうに言うのです。
トリトマは、大笑いです。
「あれは焦った!もう、黙らせるしかないって思ったね!」
「トリトマは、計画が雑すぎるんだよ。」
「でも、上手くいったんだ!良いじゃねーか!」
「はぁ、死体役なんて、もうゴメンだ。」
「結構、様になってたけどな!てか、兄貴が演技なんか出来ないって言うから、死体役になったんだろ!」
「まぁ、そうだけど。」
「俺のおかげだな!下手したら共同墓地に入れられてたぜ!」
「それは、トリトマもだろ。下手したら、二人共が共同墓地だ。」
双子町、上手く抜け出した二人は大笑いします。
しかし、今後一生目立つ行動はできません。
できる限り、双子町から遠ざかり自分達の存在を消し生きていかねばなりません。
ただ、あの町にいるよりはずっと幸せであると二人は感じ、上手くいった事を喜び合うのでした。