おいでよ、嘘つきさん。
ある日、プラタナスは体調が優れない事を母親に訴えました。

「髪をといてあげましょうね」

「ありがとう、でもお腹が痛いの」

「安心なさい。貴女は素晴らしい髪をもっているのよ。髪が輝く事で悪いものから守ってくれるのよ」


丁寧に丁寧に髪をといでくれる母に安心し、そのまま眠っていました。

翌朝もプラタナスの顔色は良くありません。
父親は心配して声をかけましたが「なんでもないの」としかプラタナスは答えませんでした。

生活態度に変わりはないのですが、外出は学校に行くだけで朝の散歩もしなくなっていきました。

友達の誘いにも乗らず、無口になっていきます。
「空っぽプラタナス」と言われても、以前のように反応がなく、虚ろな瞳に血色が悪く赤みのない肌、なのに髪だけは相変わらず輝いている。

「髪に魂を喰われた」と口にする者があらわれ、最初は皆「不謹慎な事を…」と思っていましたが、プラタナスの姿をみてると徐々に「あながち嘘ではないかも」と思いはじめました。

父親は心配し、何度もプラタナスに話し掛けましたが力なく「大丈夫よ」と言うばかり。

医者に連れて行こうとしてもプラタナスは「健康なのにそんな事は言わないで」と頑なに拒否しました。

母親は、熱心に熱心に髪をとぎ「髪が貴女を守ってくれるの、安心なさい」と慰める日々が続きました。

ある晩、プラタナスの部屋から啜り泣く声を聞いた父親は扉に耳を近づけました。

「神様、私のおかした罪とは何なのでしょうか。
全てを白状致しましたが、まだお許し頂けない。」

娘の切ない声に、いてもたってもいられなくなった父親は母親に
「あの子は、何か隠し事をしている!どんな愚かな事であっても、今すぐに聞き出してやることが重要だ」と言いました。

それに対し母親は
「隠し事ですって!?そんな事あるはずありません。もし、あったとしても女の子の隠し事を無理矢理に聞き出すなんて…余計にあの子を追い詰めるわ」
意見は真っ二つです。

< 3 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop