おいでよ、嘘つきさん。
案の定、女性は声をかけてきました。
『わかった、お肉ね!メリッサはお肉が好きね』

「違うよ、卵」

『まぁまぁ。別に気にしなくて良いじゃない』

「うん。ありがとう」

『それにしても、今日は出かけないのね』

「もう、出かけたよ」

『え!?いつ出かけたの?』

「今。もう、いい?」

『う〜ん、おかしいわ!』

女性は悩んでいますが、メリッサは急いで家に入りました。買い物に少し出掛けただけなのに、とても疲れるのです。

町の人々は決して悪い人ではありません。町の道は石畳なため足をとられやすいのです。だから、メリッサは転ぶことが多いのですが、すぐに10人くらいが走ってきて起こしてくれます。また、悲しい事や嫌な夢を見てメリッサが泣いていたら20人くらいは慰めに来てくれます。
とても、優しくて良い人々なのですが何を考えてるのか分からないのです。
小さい時は、あまり疑問に思わなかったのですが年齢が上がるほど違和感を覚えました。
「私が変わってるのかしら?」
メリッサはため息まじりに呟きました。

時計を見ると16時だったので、急いでお菓子を作り出します。なぜなら、18時には必ずコマデリとお喋りをするからです。
メリッサにとって、その時間は大切な一時です。
コマデリはジンジャークッキーが大好きなので急いで支度しました。
少し多めに作って、向かいの女性にもあげるつもりです。
小麦と卵にミルクとバターをたっぷり。ジンジャーの絞り汁を最後にいれ混ぜ合わせます。絞りに生地をいれ、可愛らしい形に仕上げたらオーブンで焼くだけです。
メリッサはお菓子作りが大好きなので、とても幸せな時間です。焼き上がるまでに箱を2つ用意しときます。
ふわっと甘いスパイシーな香りが漂ってきました。
オーブンから出すと、大好きなお菓子の香りに笑顔になってしまいます。
冷めるのを待ち、箱につめ終わり時計を見ると17時50分です。少し慌てて身支度を済ませ出掛けました。

向かいの女性が大きく手を振っています。
『メリッサ!メリッサ!いってらっしゃい!』

メリッサは女性に駆け寄りジンジャークッキーの入っている箱を渡しました。女性は感激しています。
『可愛い可愛い、赤狂いのメリッサ!ありがとう!お肉は大好きよ』

メリッサは苦笑いしなが、コマデリとの待ち合わせ場所に向かいました。
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