狼系不良彼氏とドキドキ恋愛【完】
だけど、狼谷君はなかなか次の言葉を発しようとはしない。
な、何?どうしちゃったの……?
様子を伺いながらゆっくりと顔を上げて狼谷君に目を向けた時、真顔だった狼谷君の口元がわずかに緩んだ。
「……――何だ、このタヌキ」
「へっ?た、タヌキ?」
「下手くそにもほどがあるだろ」
えっ?
タヌキって、まさかあたしが書いたウサギの絵のこと……?
狼谷君、何か勘違いしてる。
それはタヌキじゃなくて……――。
「あ、あのね……。それ、一応ウサギなんだけど……」
「ハァ?これがウサギ?冗談だろ?」
再び自分の手を眺めた後、狼谷君はフッと笑った。
その笑みに心臓がトクンっと小さな音を立てる。
え……?今の……何?
無口でツンッとしていていつも怒ったような顔ばかりしている狼谷君。
廊下ですれ違うだけでもビクビクしちゃうくらいの怖いオーラをいつもビンビンにだしてる狼谷君が……笑ってる?