狼系不良彼氏とドキドキ恋愛【完】
「は、はいっ……」
驚いて飛び上がりそうになるのを必死でこらえて恐る恐る顔を上げると、そこには無表情の狼谷君が立っていた。
周りの生徒たちの視線が一斉にあたしたちに向けられる。
「お前……――」
彼が何か言おうとしてポケットに突っ込んでいた右手を引き抜こうとした時、あたしは彼の言葉をさえぎる様に勢いよく立ち上がって、深々と頭を下げた。
「ごめんね!!あたし、本当に悪気があったわけじゃないの。ちゃんと償いはするから……だから……――」
「は?」
「だから、暴力だけは振るわないでください……。叩いたり蹴ったり……しないで?お願い……」
そう口にすると、体中が恐怖でガクガクと震えだした。
保健室ではあたしの描いた絵を見て笑ってくれたけど、今回はそうはいかないだろう。
急激に目頭が熱くなってボロボロと涙が溢れる。
狼谷君はきっと、落書きの仕返しをしにきたんだ。
まさか教室にまで来るなんて……。
それぐらい、狼谷君の怒りは強いんだろう。