狼系不良彼氏とドキドキ恋愛【完】
もしかしたら、携帯をポケットにしまう時に落としたのかも……。
慌てて振り返って歩いてきた道を引き返す。
あの手袋は去年、愁太がくれたものだった。
『これ、やる』
そう言って少しだけ照れくさそうに差し出したピンク色の手袋。
『いつも指先が冷たいんだよねぇ……。今度温かい手袋でも買おうかな』
いつもあたしの話を話半分にしか聞いてくれていない愁太。
だけど、ちゃんと聞いていてくれたんだ……。
愁太にそんな話をした矢先だったから、すごく嬉しかった。
『幼なじみって言っても、本当はお互いのこと意識してるんじゃないの?』
ってよく友達に言われる。
だけど、あたしも愁太もお互いを異性だと意識したことは一度もない。
確かに気を許せる仲。
友情とも違う関係。
小さい頃から幼なじみとして一緒に育ってきたし、ほとんど家族みたいなもの。
愁太とはおじいちゃんおばあちゃんになっても仲のいい幼なじみでいたい。
手袋をプレゼントされた時、あたしは強くそう思ったんだ。