狼系不良彼氏とドキドキ恋愛【完】
「あっ……」
顔を覆っていた手を外して顔を持ち上げると、口にタバコをくわえた狼谷君が立っていた。
「こんなとこでサボってんのか?」
体育館倉庫の壁に寄りかかって座り込むあたしを呆れたように見つめる狼谷君。
「あっ……。うん、そうなの」
笑おうとしても、顔中の筋肉が固まってしまったみたいにうまく笑顔をつくれない。
何とかそう答えると、狼谷君の表情がわずかに曇った気がした。
「なんかあったのか?」
「どうして?何もないよ」
「本当に何もないのか?」
「……どうして?」
「さっき、お前男に……――」
「えっ?」
聞き返すと、狼谷君は「何でもない」と言ってあたしの腕を掴んで立ち上がらせた。