狼系不良彼氏とドキドキ恋愛【完】
「……――あっ」
ゆっくりとした足取りでこちらに向かって歩いてくる金髪の男の子。
ダルそうに歩く狼谷君はまだあたしの存在に気付いていない。
何だか不思議。
時間が止まってるみたいな感覚。
だけど、やけに自分の心臓の音だけがドクンドクンッと辺りに響いている気がした。
一歩、一歩と近付く二人の距離。
どうしよう……。声をかけたい。
『おはよう!!』
そう言いたいのに、喉の奥に言葉が引っかかっている。
「お、お、お、お……――」
早く言わないと、狼谷君が行っちゃう。
あたしはギュッと目をつぶってこう叫んだ。