小さなきみ【短】
「チビ……」


名前はチビだけど、もう昔程の小ささでは無いチビ。


その温もりに切なくなって、また涙が零れた。


それからも泣き続けるあたしの傍に、チビはずっといてくれた。


ようやく涙が収まり始めた頃、昔からそうだったな、なんて心の中で呟いた。


梅の花が咲き誇る頃、突然我が家にやって来たチビ。


父の知人が飼っている雑種犬が生んだ数匹の子供の中にいたのが、チビだった。


チビは、“チビ”と命名したあたしに一番懐いて、あたしが帰って来るのをいつも待っていてくれた。


『ただいま』と言えば、尻尾を振って『アン』と鳴く。


つらい時や悲しい時に泣いていると、まるであたしを慰めるようにこうして傍らにいてくれる。


何を話してくれる訳でも無いけど、チビの温もりがいつだってあたしを助けてくれたのだ。


「そういえば、今日はまだ言ってなかったね……。……ただいま、チビ」


「アン」


いつものように尻尾を振るチビを抱き上げると、可愛らしい舌があたしの頬の涙を拭ってくれた。


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