日陰より愛を
「え、今何て……?」
「だからね、経済学部4年の長谷川先輩がちょっとだけだけど映画に出るんだって!」
私はそれを聞いて頭が真っ白になった。
先輩と出会ってから1年ほどがたち、私は2年、先輩は4年になっていた。
そして、私が今まで知らなかった事実を知った。
彼だったのだ。
大学で噂になっていたイケメンは。
さらに悪いことに、彼は芸能界の人だった。
私が一番関わってはいけない人だったのに。
私の秘密は彼にとっても致命的だ。
大女優の隠し子と知り合いだなんて、大スキャンダルになる。
些細なことが何倍にも面白おかしくされる世界だ。
『火のないところに煙が立つ世界なんだ。くれぐれも人間関係は慎重にしなさい』
20年間言われ続けたことだ。
「なんてこと……っ!!」
私は、とんでもない過ちを犯してしまった。
「葵? どうしたの?」
周りの声が頭に入ってこないほど、私は混乱していた。
一刻も早く、先輩から離れなくては。
私に光をくれた人。
彼を傷つけるわけにはいかない。