日陰より愛を
私はその日から中庭に行かなくなった。
もともと学部も学年も違った私達が会わなくなるのは、さほど難しいことではなかった。
……まぁ、私が意識的に避けてるってこともあるんだろうけど。
彼も映画の仕事を頑張っているらしい。
それでいい。
私は日陰が似合う存在なのだから。
太陽のような彼と一緒にいてはいけない。
そんな風に過ぎた一週間、無事に彼と会わずにすんでいた。
そのせいかもしれない。私は完全に油断していた。
その日も講義が終わり、久しぶりに図書館に行こうと歩いていたときだった。
「篠崎さんっ!!」
突然名前を呼ぶ声が聞こえて、びくりと肩を揺らす。
振り返ると、見覚えのある姿が目に入った。
「っ………」
私は慌てて走り出す。
見つかった。
見つかってしまった。
「篠崎さん! ちょっと待ってっ!!」