日陰より愛を


「ねぇ、どうして逃げるの? 篠崎さん」


ひどく切ない声で私の名前を呼ぶ声に、胸が締め付けられるようだった。


「私、は……」


「……亮介、何があったか知らないがここじゃ無理だ。注目されすぎている」


その声にはっとして辺りを見渡すと、好奇の目にさらされていた。


私は震え上がった。
ずっと恐れていたことが……。


顔色を失った私を見て、長谷川先輩がそっと肩を抱き寄せた。


「ごめんね。でも、俺はもう迷わないって決めたんだ。……場所を移そう」


「……亮介、ここは任せてくれていいぞ」


先輩の知り合いの人は優しく微笑んで私達を送り出してくれた。


「亮介のこと、頼むよ。最近荒れてて参ってたんだ」


「……え?」


「……行こう」


私達はその先輩にあとを任せ、その場を後にした。




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