日陰より愛を
「さっきのは藤堂啓太(とうどうけいた)。俺の親友なんだ」
あの場を離れて先輩に連れてこられたのは隠れ家のようなカフェ。
さっきまでの気まずさから私はまだ顔を上げられずにいた。
先輩の声……久しぶりに聞いたなぁ。
なんか、泣けてきた。
そんな私を見て先輩はゆっくり話しかけてきた。
「……ねぇ、篠崎さん。俺なんかしちゃったかな?……避けられるようなこと、したかな」
穏やかなその声に私は涙を堪えられなかった。
ゆっくり、ゆっくり、首を横にふる。
「先輩は…悪くありません。私、私はっ……!」
「……ゆっくりでいいんだ。君の言葉が聞きたいな」
そう言って先輩は優しく微笑んだ。
あぁ、なんて綺麗な人なんだろうか。
私、この人の側にいたい。
そんなことが、許されるんだろうか。