日陰より愛を
「でも、ちょっと安心した。嫌われたわけじゃないみたいだね」
先輩はふふっと笑ってコーヒーを一口飲んだ。
ブラックで飲めるんだ…。
そんなことを思いながらぼーっとその様子を眺めていたら、突然先輩が水をがぶがぶ飲み始めた。
「先輩っ……大丈夫ですか!?」
「けほっ、けほっ。平気平気! うー、やっぱり不味いなぁ。ミルクと砂糖入れなきゃ飲めないよね、コーヒーって」
照れたように笑って角砂糖を3つも入れるものだから、私は思わず声をたてて笑ってしまった。
「……よかった、笑ってくれて。ずっと会いたかったんだ。突然姿を見かけることもなくなって悲しかったよ」
「……本当にすみませんでした。私、先輩が映画に出てるって話を聞いて、自分なんかが側にいちゃいけないって思って……」
「そっかぁ……そんなこと思ってたんだねー」
先輩はのんびりとそう言って、今度はちゃんとミルクと砂糖が入ったコーヒーを飲んだ。
そして、カップを置いた先輩は真剣な表情で私のことを見つめてきた。