日陰より愛を
「でもね、それは大きな勘違いだよ。俺は君を笑顔にしたくてあの映画に出たんだ。あの映画の原作者が好きって前に言ってたでしょ?」
そう…なのだろうか。
私はテレビも映画も見ないから、よくよく考えると先輩が何の映画に出演したのか知らなかった。
すると先輩も思い出したようで、
「あ、そうだよ! 篠崎さんは映画見ないんだった」
と言って、私達は顔を見合わせて笑った。
「じゃあさ、今度一緒に見に行かない?」
「私と、ですか?」
この20年間、母親に関わるものからは全て逃げてきた。
映画はもちろんテレビすらまともに見たことがないのに。
私でいいのだろうか。
「もちろん! きっと篠崎さんを笑顔にしてみせるから。2人でデートしよう!」
「デート!?」