日陰より愛を
りょうが大学を卒業すると同時に私達は一緒に住み始めた。
それは、私が一人暮らしで身寄りがないことを知った彼の優しさ。
「今度俺も一人暮らしを始めるんだけど、一緒に住まない? 実は家事が苦手でね……」
彼はそう言っていたが、それは私に気負わせないための口実。
私もそれを分かっていて了承した。
彼をもっと近くで支えたかったから。
その頃からりょうの芸能界での仕事が増えていった。
それに伴い一緒にいる時間は減っていった。
そして、仕事が増えるにつれ彼が挫折を感じることも多くなった。
私はそのたびに背中を押し続けた。
「分かるよ、りょうの気持ちも。あなたのいる世界は一瞬の油断が命取りになる。それでもりょうは精一杯頑張ってるでしょ?」
「……葵は優しいね。俺は葵に優しくできてるかな? 時々、すごく不安になる。もっと普通の人のところに行っちゃうんじゃないかって」
私はその言葉に胸が締め付けられるようだった。
彼がこんなにはっきりした弱音を吐くなんて、始めてのことだったから。