日陰より愛を
「……あのね、りょう。私も役者を目指したことがあるんだよ」
私は彼を励まそうと自分の昔話をすることにした。
いまだに私の秘密を話すことはできていないけれど。
最近では少しずつ自分のことを話すようになっていた。
「結局、目指すことなく諦めちゃったけど。だからね、りょうには私の夢を代わりに叶えてほしいんだ」
そう言って微笑めば、彼は驚いたように私を見つめてきた。
「どうして、諦めちゃったの? 葵は可愛いし……ビジュアル的には問題なかったでしょう?」
それは、大女優の娘だからね。
とは言えずに、私は苦笑いで答えた。
「私は日陰の似合う女なの。表にでて光を浴びる存在じゃなかったってこと」
だから、あなたを陰で支えていくから。
私がそう言えば、彼はふんわり微笑んだ。
「そう、だね。葵が支えてくれるから俺は頑張れる。……ありがとう。もうちょっと頑張ってみるよ」