日陰より愛を
「今までは女優を起用していたのに……。クライアントは何も言ってこなかったんですか」
「おー、それがあちらさんも大喜びで! ぜひとも長谷川亮介をって言ってきたらしい」
「そう、ですか……」
私はその場で崩れそうになる体をなんとか持ちこたえた。
そりゃ、人気のタレントを使うことをためらう理由はないだろう。
私だって普段だったら泣いて喜んだはずだ。
しかし、今回は現実を受け入れられそうになかった。
……でも、これは仕事だ。
それに、こうなることを望んだのも、選んだのも私自身だ。
大丈夫、私は諦められる。
「あ、そうだ。明日俺とお前で挨拶に行くからよろしくー」
――――大丈夫だろうか。
冷や汗が一つ、背中をつたった。