日陰より愛を

side 亮介



――side 亮介――



「篠崎っ! くそっ……申し訳ありません、新人1人に任せた私が悪かったですね。……ですが社長、長谷川さん、何があったのか後で聞かせてもらいますよ」


あれでも私の大切な後輩なんです。


そう言って、前島と呼ばれた葵の先輩は後を追って飛び出していった。


正直に言えば俺が後を追いたい。


泣きそうだった顔が頭にこびりついて離れない。


走っていって、抱きしめてやりたい。


でも、その前に


「………社長、今のはどういうことですか」


俺、長谷川亮介はまだ動揺している社長を問い詰めた。


「あなたは葵の父親なんですか? 榊原碧が母親なんですか?」


どうしても、確かめなければいけないことがある。


「……葵は、あなたが俺のことを奪ったと言っていた。どういうことです? 葵のほうから、別れてやるからお金を寄越せと言ってきたのではないのですか!!」


だから、俺は葵を諦めようと必死にっ……!


それは嘘だったというのか?


「………こちらから渡すよう指示した。彼女は何も言わずに受け取った、と報告を受けている」


「っ……なんてことを!!」


信じきれなかった俺も俺だ。


冷静に考えれば、葵がそんなことを言うはずがないのに。


ロケから帰ってきて彼女がいなくなっていたことに動揺し、冷静に判断ができなくなっていた。




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