日陰より愛を
「で? これからどうすんだ」
前島さんは切り替えが早く、とても気が利く。
いつもへらへらしてるけど、実際は恐ろしく仕事ができる人だ。
……奥さんと小学生の娘さんには頭が上がらないようだけど。
本音を言えばもっと一緒に仕事がしたい。
純粋に仕事は楽しかったから。
この人の元で働けて良かった。
心から、そう思った。
「分かりません。でも、とりあえずもうこの業界からは離れようと思います」
「……そうか」
そんな会話を交わして、しばらく2人とも何も言わなかった。
でも、この人との沈黙は辛くない。
むしろ心地よいものだった。
しばらくして、ふいに前島さんが尋ねてきた。
「篠崎、お前甘いもん好きか?」
「は? 甘いものですか?」