日陰より愛を
りょうが海外ロケに行っている隙をみて、彼と住んでいた部屋を出た。
安いアパートに移り住んでもうすぐ一週間。
そろそろ彼が帰ってくる頃。
彼には事務所の方から話をしてくれるそうだ。
『申し訳ないが、あなたには悪役になっていただきます』
事務所の人が最後に言い残していった。
まぁ、お金を受け取ったのは事実なわけで。
それを使えばもっといいところに引っ越せたけど。
どうしても使う気にはなれなくて。
手付かずのまま、私の手元に残っている。
受け取れば。
やっぱり別れたくないなんて言えなくなるから。
彼の元に戻れないように、自分の抑止力として受け取った。
昔から諦めるのは得意だ。