日陰より愛を


「そ、甘いもん。考えてみりゃお前に何か奢ったことなかったからなぁ。女は甘いもん食えばたいがい元気になるもんだろ?」


そう言って、前島さんはメニューを開いて私に差し出してきた。


「何でも好きなもん食え。最後の晩餐だ」


そして、「ははははっ!」と豪快に笑った。


「まだ夜じゃないですよ、前島さん。それに死ぬ訳じゃありません」


そう言いながらも、私は一緒になって笑っていた。


いつもこの人には助けられる。


私は一生この人には適わないだろう。


「……じゃあ前島さん。私、ハンバーグが食べたいです! ライス大盛で!!」


「……お前ってつくづく変わってるよなぁ。……よし、腹が減ってはなんとやらだ! 俺も食うぞぉ!」


「はい!」


そうして私達は最初で最後の一緒の昼食を楽しんだ。




< 40 / 67 >

この作品をシェア

pagetop