日陰より愛を
「そ、甘いもん。考えてみりゃお前に何か奢ったことなかったからなぁ。女は甘いもん食えばたいがい元気になるもんだろ?」
そう言って、前島さんはメニューを開いて私に差し出してきた。
「何でも好きなもん食え。最後の晩餐だ」
そして、「ははははっ!」と豪快に笑った。
「まだ夜じゃないですよ、前島さん。それに死ぬ訳じゃありません」
そう言いながらも、私は一緒になって笑っていた。
いつもこの人には助けられる。
私は一生この人には適わないだろう。
「……じゃあ前島さん。私、ハンバーグが食べたいです! ライス大盛で!!」
「……お前ってつくづく変わってるよなぁ。……よし、腹が減ってはなんとやらだ! 俺も食うぞぉ!」
「はい!」
そうして私達は最初で最後の一緒の昼食を楽しんだ。