日陰より愛を


昼食を終えた私達は駅に向かってゆっくり歩いていた。


それでも、いつかは到着してしまうもので。


「とうとう、お別れだなぁ」


「……ですね」


前島さんは会社、私は家に帰るため方向が逆だった。


前島さんとの空間はあまりにも心地よくて、離れがたくなってしまった。


「とりあえず、明日退職願を出しに会社に行きますね」


苦笑いしながら私はそう言った。


今日はもう会社に行けそうにはない。


そんな私を見て、前島さんは少し眉を下げて言った。


「……なぁ、篠崎。知らなかったかもしれないけどさ。俺、結構お前のこと好きだったんよ」


「…そうですか。私も前島さんのこと、結構好きでしたよ」


2人で顔を見合わせて笑いあった。


私の乗る電車の時間が迫ってきたので、本当にお別れのあいさつをする。


「今まで、本当にお世話になりました」


「やめろよ、泣けてきちゃうだろ」


そう言いながら前島さんは泣き真似をする。


私はそれにまた笑った。


「……何かあったら連絡しろよ。お前の背負ってるもんはずいぶん重いみたいだから。一緒に背負ってやることはできないけどさ。愚痴くらいなら聞いてやっから」


「……ありがとうございます」


そうして私は前島さんと別れた。




< 41 / 67 >

この作品をシェア

pagetop