日陰より愛を
昼食を終えた私達は駅に向かってゆっくり歩いていた。
それでも、いつかは到着してしまうもので。
「とうとう、お別れだなぁ」
「……ですね」
前島さんは会社、私は家に帰るため方向が逆だった。
前島さんとの空間はあまりにも心地よくて、離れがたくなってしまった。
「とりあえず、明日退職願を出しに会社に行きますね」
苦笑いしながら私はそう言った。
今日はもう会社に行けそうにはない。
そんな私を見て、前島さんは少し眉を下げて言った。
「……なぁ、篠崎。知らなかったかもしれないけどさ。俺、結構お前のこと好きだったんよ」
「…そうですか。私も前島さんのこと、結構好きでしたよ」
2人で顔を見合わせて笑いあった。
私の乗る電車の時間が迫ってきたので、本当にお別れのあいさつをする。
「今まで、本当にお世話になりました」
「やめろよ、泣けてきちゃうだろ」
そう言いながら前島さんは泣き真似をする。
私はそれにまた笑った。
「……何かあったら連絡しろよ。お前の背負ってるもんはずいぶん重いみたいだから。一緒に背負ってやることはできないけどさ。愚痴くらいなら聞いてやっから」
「……ありがとうございます」
そうして私は前島さんと別れた。