日陰より愛を
それには、今よりずっと若い母親の声で私へのメッセージが記録されていた。
テレビ以外で母親の声を聞いたことがなかった私は、驚いて声も出なかった。
知らなかった……。
母が、こんなことを考えていたなんて。
相手が何を考えているのか、考えたこともなかったのは私の方だ。
母は、こんなにも私のことを考えてくれていた。
その後、夢中になってテープを聞いた。
録音時間ギリギリまで収録されたそれは。
全て、最後の方は涙ながらにただ会いたいと繰り返していて。
私は声も出さずに涙を流し続けていた。
最後のテープを見て、はっと気がついた。
私、今日が誕生日だ……。
つまり、このテープは今日、録音された…?
そっとりょうを見ると、すべてを悟ったように微笑んで頷いた。
「だからこそ今日、俺は葵に会いに来たんだ」
それを聞いて私は「ははっ」と小さく笑った。
「誕生日なんて、気にしたことなかったから」
なんて、それは強がり。
ずっと気にしていた。
私が産まれてしまった日。
私は、この日が何より嫌いだったから。
何度、この日を迎えるたびに死のうと思ったことか。
私が暗い表情になったのを見て
「……何を考えてるか、なんとなく分かるけどね。とりあえず、これ聞いて」
少し乱暴にテープを押し込めて、りょうがレコーダーを再生させる。
ちょっとムッとしたりょうに首を傾げつつ、私は最後のテープに耳を傾けた。