日陰より愛を


ぷつっという小さな音で再生は終了した。


私はしばらく放心したように動けなかった。


……最後のテープで、初めて母は泣かなかった。


無邪気に笑って、私に幸せになってと。


――――望んじゃいけないと思ってた。


私は、幸せになってもいいのかな。


それを、望んでもいいのかな。


溢れる涙を堪えることもせず、私は目の前のりょうを見つめた。


そんな私に、りょうはゆっくり話しかけてきた。


「……うちの社長もね、榊原さんに言われてすごい後悔してた。『これ以上あの子から何を奪うつもり!?』ってね」


そのときのことを思い出しているのか、りょうは可笑しそうに笑った。


しかし、すぐに真剣な顔になって私に向き直ってきた。


「………ねぇ、葵。今まで辛かったよね。だから、これからは俺が支えていきたい。……ただ愛してるんだ。葵を諦めるなんて、できるわけないっ!!」


叫ぶようにそう言って、こらえきれなくなったように私の腕を引き強く抱きしめてきた。


『安心して、飛び込んじゃいなさい!!』


母の言葉が、胸に響いた。


「りょ、う……!!」


私は逆らうことなく、その広い胸に飛び込んでいった。





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