日陰より愛を
涙が、止まらなかった。
そんな私を、りょうは力一杯抱きしめてくれた。
ぐすっと頭の上から鼻をすする音がして。
りょうの腕が震えているのに気づいた。
彼もまた、泣いているのだ。
「……ねぇ、葵。今度、2人でデートしよう!」
震えた、涙声の彼の台詞。
それは、とても懐かしい響きを持って私の中に入ってきた。
大学生のときの、カフェでの小さな1コマ。
彼が初めて私に告白してくれた、あの日。
あのときも私は彼から逃げていたっけ。
いつだってあなたは、ためらうことなく私を捕まえに来る。
私は笑いながら、彼の背中に腕を回して言った。
「デートって、付き合ってる男女がするものですよね?」
そう言えば、彼もとても嬉しそうに笑って私の額に自分の額を合わせて言った。
「………そう。だからね、葵」
「俺のお嫁さんになってください」
「…………えっ」
「ふふっ、タコみたいだ。……ねぇ、葵? 俺はもう二度と、君が逃げる隙なんて与えないからね」
そう言って、りょうは体を離して触れるだけのキスをした。
途端にもっと赤くなった私に、りょうもほんのり頬を染めて言った。
「愛してる、葵。俺と結婚して?」
「…………はい」