日陰より愛を
epilogue


―――――――






「りょう、起きて! 撮影に遅刻しちゃう!!」


朝に弱い俺を必死で起こす、可愛い俺の葵。


あの騒動のあと、2年の月日を経て葵を取り戻し、問答無用で籍をいれた。


また失うことが怖かったから、一刻も早く法的にも葵を俺に縛り付けておきたかった。


何て醜い独占欲。


それでも、もう二度と彼女を手放すことなんてできないのだ。


そんな俺のどす黒い感情に気づくことなく、葵は俺の手中に収まってくれた。


「起きてっ、りょうってば!!」


俺の狸寝入りに気づくことなく、未だに必死で起こしにかかっている葵。


実はかなり前、彼女が抱きしめていた俺の腕を抜け出したときから、目は覚めている。


では、なぜ狸寝入りをしているか。


それは――――


「起きて!起きてってば!! もうっ!りょうっ!」


そう言って、ベッドに上がり込んでくる葵。


すかさず腕を掴み、無防備な仔羊を腕の中に囲った。


いつも葵は俺の罠に簡単に飛び込んでくる。


護身術に長けた彼女のことだから、きっとわざとなんだろうけど。


それを腕の中に閉じ込めるのが俺の朝の楽しみなのだ。


頭と腰に手をやり、ぐっと抱き寄せる。


(あぁ、葵の感触だ……)


これではかなりの変態だが、しかたない。


葵が可愛いすぎるのがいけないんだっ。


ぎゅーっと抱きしめ、朝の葵を楽しむ。


幸せだぁ………。





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