日陰より愛を


「んんっ……ちょっ、りょうってば!」


ことをさきに進めようとしている俺に気づき、葵が全力で止めてきた。


「なにする気!?」


「なにって……わざわざ口に出して言ってほしいの?」


葵はMだ。


最近、思うようになったこと。


すると葵は真っ赤な顔で怒鳴った。


「ち、違うっ! 仕事はどうすんのっ!!」


……あぁ、そんなこと。


だったら、


「遅刻したらどう――――」


「ないよ」


葵の言葉を遮って、俺は言い放った。


葵は意味が理解できなかったのか、ポカーンとしている。


………可愛い。


「………へ?」


「今日、休みになったの。昨日帰ってくるの遅くなって言いそびれちゃった」


そう言ってにっこり笑えば、葵はしばらく呆けていたが、みるみるうちに笑顔になった。


俺の大好きなひまわりのような笑顔が咲く。


それを見て俺の心は暖かく、しかしドキッと跳ね上がる。


幸せってこういうこと。


俺の幸せは、ただ1人の笑顔だけだ。





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