友達??恋人??
それは、入学式が始まる前だった。


あたし、春川真凛(はるかわまりん)は、自分の教室である1年5組に向かっていた。


「・・・友達、できるかな。」


私はそう呟きながら廊下を歩く。


ー知らないところ、知らない人たち。


中学では友達の縁を切ったあたしが、珍しく緊張していた。


「高校デビュー・・・か。」


最近よく聞く「高校デビュー」。


あたしにできるだろうか、そんなことを考えていたそのとき、


ドンッッ!!



誰かがあたしにぶつかった。


あたしはしりもちをついて、お尻をなでながら「すみません」と言おうと、顔を上げた瞬間。


ー時が止まった。


あたしの目の前には、とても整った顔立ちの男子生徒がいた。

ー一目惚れだった。


彼はあたしに手を差し出してきて、「ごめん」と言った後、すぐにどこかへ走り去っていってしまった。


ー入学式。


あたしはさっきぶつかったあの男子生徒の事が頭から離れなくて、校長先生の話なんか一ミリも聞いていなかった。


だけど・・・


ーあたしの隣に、彼はいた。


あたしが彼の存在に気が付いたのは、入学式後半だった。


祝辞を延々と話す校長に飽きて、ふと隣を見たら…

彼がいたのだ。

「っ!!!!!」

あたしはすぐさま正面を向いて、早まる動悸を必死で抑え込もうとした。


(なんでいるのよー!!)

あたしは心の中で自分を落ち着かせようと深呼吸をした。




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