※公開終了間近! イロモノなアタシ
そう言って携帯を出して、自分の番号をさっき渡した名刺に書いて、あたしへ戻した。


「これ、今度かけて」
「あの、名刺」
「あ、ごめん」


こんな行動をしているのを見ると、本物の天然なんだなと思い知る。


あわてて名刺をもう一枚出して、あたしはその裏に自分の携帯番号を急いで書いた。


「これも良かったら」
「ありがとう」


最後に初めて笑顔を見せて、二丁目のネオンの中に消えて行く。


ワケがまるで分からない彼の行動、そして手元に残された携帯電話の番号。


相手は芸人、きっとシャレに違いないと思ってはみても、何だか胸の中に突き刺さる物を感じた。


彼氏居ない歴は生きてきた21年分のあたし、もしかしたらチャンスかも! とは思ったけれど、多分カン違いだろう。


そう、あたしはデブス。


デブゲイのシホ。


モテなくて、お笑い専門要員なのだから。
< 13 / 386 >

この作品をシェア

pagetop